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自分の幸せは何だろうか?人気企業を志望する前に考えてみよう「持たない幸福論」【書評】

記事のアウトライン

  1. イントロ
  2. 本の概要
  3. 本の要約
    1. はじめに
    2. 働きたくない
    3. 家族を作らない
    4. お金に縛られない
    5. 居場所の作り方
    6. 本書のまとめ
    • 本書のメインメッセージ
  4. 本の感想
    1. この本の面白い部分
    2. 本を読んで考えたこと
  5. どんな人におすすめか

①イントロ

自分の幸せってなんだろう。3年後、10年後にどういう風になっていたいんだろう。僕の友人たちは今、就職活動の真っただなか。彼らには、「とりあえず人気企業にエントリー」を重ねる前に、自分の理想のライフスタイルを考え抜いてほしいなと思います。「持たない幸福論」は、未来の幸せを考えるうえで良質なインプットとなるでしょう。

②本の概要

京大卒ニートphaさん*1による幸福論。自身の体験や名著のメッセージをサポートにして、「持たない」生き方を説いています。「働いて、お金を稼いで、家族を作って」という「普通」なことだけが人の幸せじゃない。自分の価値観を大切にして生きる考え方を、自身の体験談や他の本の引用を通じて書いています。「人は何をしていると幸せなのか」を考えぬいたphaさんによる洞察は本質をついていながらも、文体や雰囲気はとても優しくて読みやすいです。

③本の要約

(1)はじめに

しんどい社会の規範からは逃げればいい。「普通」は五十年前くらいの昔の価値観から来ていて、今の社会に合ってないこともある。だから、自分の好きな生き方を考えてみよう。今は自由に生きることができる時代なんだ。

(2)働きたくない

人は外部に影響を与えたり、変化をさせることに喜びを覚える生き物だ。仕事で成果をあげたり、ゲームでドラゴンを倒して嬉しいのも、変化する世界の反応を楽しんでいるからだ。だから、影響を及ぼしたい世界が仕事であっても、ゲームであっても、偉いとか正しいというものはない。自分はどんな世界と関わりたいのか考えて、その適度な距離感を測りながら生きていくといい。

(3)家族を作らない

「家族」は戦後の高度経済成長モデルの中で誕生した結構新しい概念だ。これは現代のシステム上ではうまくはまらないこともあるし、人はムラとかシェアハウスとかで生きることもできるので、家族の形式に捉われる必要はない。人間にとって大切なのは孤独にならないことだから、そのためにどうしたらいいかを考えて、好きなように人と関わって生きていけばいいと思う。

(4)お金に縛られない

自分の価値基準を持てば、お金を使わなくても生きていける。料理や読書などお金をかけなくても楽しめることはたくさんあるからね。それに、お金は何かを得るためのツールでしかないから、そもそも自分が何を得たいのかを知ったほうがいいと思う。他人と比較せず自分の感覚や感情に素直になって、探してみよう。

(5)居場所の作り方

人は「ここにいてもいいんだ」っていう居場所を求めて活動している。その居場所が一つしかないと上手くいかなくなった時に大変なので、複数持つといいと思う。いろんなコミュニティに顔をだしてセーフティネットを広げておこう。

(6)本書のまとめ

世の中は少しずつしか変わらない。一人一人が何かに気づいて行動し始めることで変わっていくものなのだ。だから、周りと違うことを恐れたりせず、好きなことをやったらいい。

〇本書のメインメッセージ

「周りをを気にせず自分の幸福を考えて生きよう」

④本の感想

(1)この本の面白い部分

●読んでいて思考が加速する

この本を読んでいると色々なアイデアが浮かんできます。それは、phaさんの本が思考の余地を残した優しい文体だからだと思います。本書のメッセージはは示唆深いのですが、どれも「やってみたらどうだろう」という感じで何か優しい。心地よい問いかけをたくさん行ってくれる本でした。

●研究対象となるような新しい時代の生き方をしている

phaさんは和歌山県熊野と東京を一か月で行ったり来たりする生活を送っています。都会と田舎のいいとこ取りの暮らしをしているんですね。これって「持続可能な社会の研究」の調査対象となるような生活なんです。
資本主義社会では、お金のあるところにあらゆるものが集まります。都市が発展すればするほど、農村にはヒトやモノが行きわたらなくなり衰退していきます。それを防ぐために、どのようにして都市部と農村両方の発展を実現するかということを研究者達が考えています*2。その一つの打ち手として注目されているのが「都市部と農村部への定期滞在」というスタイルなのです。そのようなホットな概念を、自分で幸せな生き方を考えた結果として勝手に行っているphaさんって、面白い。

見田宗介氏による解説がエレガント

本書には社会学者の見田宗介*3による解説がついています。これも簡潔ながら面白い。貨幣経済の誕生から現代の社会システムの歪を、仏教の根本思想から紐解くという...。最後に書いてある「pha」という言葉の解釈もエレガントでその秀逸さに笑ってしまうので、ぜひ買って読んでほしいですね。

(2)本を読んで考えたこと

●お金持ちの恩恵も忘れてはいけない

本のメッセージを受け取る前に、資本主義とそのシステムを支える大企業達の恩恵も忘れてはならないな、と思います。生きていくのに困らない公共財やサービス*4は税金によって支えられています。その税金を支えているのは、大企業やそこで働く高年収なサラリーマン達です。いくら脱資本主義的な発想をしようとも、彼らのおかげで我々の生活があることは心にとめておかねばな、と思います。

もくもく会なるものをやってみたいな

本書で紹介されていた、「もくもく会」、むちゃくちゃいいなと思いました。もくもく会とは、喫茶店とかに集まって、後はひたすら自分の作業に没頭するという会です。人間、一人でいるのは寂しいから誰かと会いたいけど、やることが決まっていると息苦しいからという趣旨で開催されています。これ、ぼっちにむちゃくちゃ良い。ぼっちって、何かと自分都合で物事を進めたくて、群れることを意味嫌うくせに、人との触れ合いはやっぱり求めたくなるんですよね。僕もホントそうで、大学は一人行動が多く、下手すると誰とも会話せず帰ることもある。でも、なんか寂しい、誰か話相手になってくれ~って思うこともあります。大学でもくもく会をやろうかな。

●世の中は少しずつしかは変わらないから、意識の高い*5活動にも意味がある

本書のメッセージでも特に好きなのは「世の中は少しずつしか変わらない」です。自分の問題意識や考え方がすぐ社会全体に浸透しないけど、時間とともに広まっていきます。
phaさんが作中で言うように、現代は侍が平気で人を切ったりしていた時代に比べれば、大分自由で過ごしやすい時代になったけど、まだまだ暮らしにくい部分もあります。じゃあ、その苦しい部分を取り除くために世の中を劇的に変えられるのかというと、やっぱりそうはいかない。歴史を振り返ってみれば、今当たり前になっている考え方や概念は長い時間をかけて定着したものがほとんどなんです。誰かが最初に気づいて提唱し始めたことが、時間をかけて多くの人に咀嚼され、やがて当たり前となるというサイクルを重ねて、少しずつ社会は変容していきました。だからこそ、「意識高いよね。そんな意味のないこと、なんで頑張ってるのさ。」と言われるような活動にも意味があるのではないでしょうか。そういう「意識高い人の出現」も、長い歴史の中で見れば、空気が変わり始める一場面の一つ。大衆と違う意識をもって活動し始めると、あまりの伝わらなさに絶望するかもしれないけど、それも一つの転換点に貢献している証拠だと思えばいいんです。

⑤こういう人におススメ

今後の生き方を考えてみたい全ての人におすすめ

どんな人にもおすすめできます。エコ系の本や思想が好きでたくさん読んでいる方でも、phaさんのようなスタンスでの語りや生活の仕方は新鮮だと思うので、おすすめできます。さらっと読めますし、色々な本の紹介載っているという実用的な面もありますしね。
特に、これからの生き方を考えるシーンに立つ、就活生や転職を控えた方などにはよく刺さる本だと思います。ぜひ読んで、自分にとって一番豊かなライフスタイルは何なのか、ぜひ読んで考えてほしいですね。

*1:twitter.com

*2:都市と農村の相互作用システムの構築と豊かさの創造 | 研究プロジェクト一覧 | 研究プロジェクト | 総合地球環境学研究所

*3:見田宗介という人は、とても理論的でありながら壮大なビジョンを描くロマンチストでもあり、その巧みな文章や発想や論理展開は余人が真似できるものではないという、日本の社会学における伝説のような人だ。」<持たない幸福論>p214より。

*4:道路などのインフラや社会保険などのサービス

*5:ここでは「意識高い」を「普遍的な価値観やスタイルから離れた考え方や行動」という意味で使います。